昨日「生産と消費を想う」を書いて、それをトリガーに文字にしておきたい事が山のように出てきたので続編として。
コスト削減のために過酷な労働を強いているのはファストファッションだけでなく、高価な商品を扱うハイブランドにも存在している話。服だけに限らずあらゆるものが低コスト生産を追求し、労働力と品質の最小公倍数を確保しようとする。止まらない。
その動きに「待った」をかけるキーワードが最近の僕の頭を占領している。いつからか耳にするようになったフェアトレード(Fair trade)という言葉は、生産者から安く買い叩くのではなく、公正な値段で買い取る貿易のこと。代表的なものとして珈琲豆やチョコレート、綿(コットン)などが対象に挙げられる。
日本ではPeeple Tree(代表:サフィア・ミニーさん)やMother House(代表:山口絵理子さん)という企業が早くから立ち上がり、フェアトレードをファッションの領域で広げている。しかも品質を無視した「フェアであればOK」という考えではなく、生産地に赴いて生産指導をし「先進国で売れるもの」を作るという本物の支援がコンセプト。
エコ(Ecology)・ロハス(Lohas)・スロー(Slow)・サスティナブル(Sustainable)・オーガニック(Organic)・・・それっぽい言葉が乱立している。でも、エコバッグを大量に生産して販売するといった、本来の意味を失い言葉だけが一人歩きするような事例は後を絶たない。上記のような一部の本気な人達の行動を除けば、いいようにビジネスに使われているだけなのかもしれない。
その語彙の中に、最近また1つ新しい仲間が加わった。エシカル(ethical)。英語で「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞であり、これを冠につけた「エシカル・ファッション」や「エシカル・ジュエリー」という言葉が欧米を中心に広がっている。階層で表すとすれば、エシカルはフェアトレードを包括する、もっと概念的な表現。このエシカルという概念を日本で広げようという人が増えている。
情報発信やイベント運営を行うETHICAL FASHION JAPAN(代表:竹村伊央さん)、エチオピアのシープスキンを使った高級バッグブランドを展開するandu amet(代表:鮫島弘子さん)の活動が目立つ。気づけば、ここまで挙げてきた4社の代表は全て女性。andu ametの鮫島さんのTweetにすごく共感する点があったので紹介したい。
右に行くか、左に行くか。自分のブランドを作るということは、哲学や行き方を問われ続けているようなものだとつくづく思う。私の人生は迷いだらけだから、選択するのも毎回一苦労だ。
— 鮫島弘子(andu amet)さん (@co_samet) 2013年5月8日
エシカルブランドを標榜したところで、私自身人並みの闇は抱えているし、これまでもたくさんの間違いを犯してきたし。そういうものをなかったことにはもちろんできないし、するつもりも一切ないけど、ただ、だからこそこのブランドだけは私が理想とするものにできるだけ近づけたい。
— 鮫島弘子(andu amet)さん (@co_samet) 2013年5月8日
でもその理想とする姿を作るというのは本当に難しい。世の中、ハリウッド映画みたいに善と悪だけじゃない。全ては角度によって光にも陰にもなる。
— 鮫島弘子(andu amet)さん (@co_samet) 2013年5月8日
人は多くが生産者であり消費者だ。誰かの子供であり誰かの親になる。生命を奪う立場にありいずれは死ぬ存在である。常に両側面から物事を捉え、考えることから逃げてはいけない。思考停止して、自分の意見だけを押し付けるようになったとき、最終的に何が起きるかは歴史が証明してくれている。
僕も自分のテーマである毛皮とどう向き合っていくのかについて、一生戦い続けるものだと思っている。毛皮は色々なイメージを人に与える。極端に嫌う人がいて、極端に好く人がいる。僕はその中間にいる。だから考える。毛皮以外の事も比較対象として考える。普通に生きていたらここまで思考を深めるに至らなかったと思う。だから僕は毛皮の存在に感謝している。
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